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されど夢ほどに世は自由ならず。武男はもとより信じて思いぬ、二人ふたりが間は死だもつんざくあたわじと。いわんや区々たる世間の手続きをや。されどもその心を実にせんとしては、その区々たる手続き儀式が企望と現実の間に越ゆべからざる障壁として立てるを覚えざるあたわざりき。世はいかにすとも、彼女かれは限りなくわが妻なり。されど母はわが名によって彼女かれを離別し、彼女かれが父は彼女かれに代わって彼女かれを引き取りぬ。世間の前に二人が間は絶えたるなり。平癒へいゆを待って一たび東に帰り、母にあい、浪子を訪とうて心を語り、再び彼女かれを迎えんか。いかに自ら欺くも、武男はいわゆる世間の義理体面の上よりさることのなすべくまたなしうべきを思い得ず、事は成らずして畢竟ひっきょう再び母とわれとの間を前にも増して乖離かいりせしむるに過ぎざるべきを思いぬ。母に逆らうの苦はすでになめたり。
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