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その人は体格のよい身体をしゃんと立てて椅子に腰をかけ、右膝を折り曲げています、いつも何だか判らない楽器をその上に乗せて、奏でています。普通には殆ど聞えません。私は母から届けるよう頼まれた仕立ものを差出します。その人は目礼して受取って傍の机の上に置きます。そして手で指図さしずして私をちょうどその人の真向うの椅子に掛けさせて、また楽器を奏で続けます。その人は何も言いません。細眼にした間から穏かな瞳をしずかに私の胸の辺に投げて楽器を奏でます。私の不思議な苦しみはこれから起ります。
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