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客は臣下、亭主は主君。ここでの形は、何か逆さかさま事に見えるが、たとえ主君でも亭主である以上、客に対して、慇懃いんぎん、いやしくも和敬わけいを崩さないことは茶礼である。――常に群臣を下に睥睨へいげいして、皇居へ伺候するとき以外は、頭ずを下げることを知らない信長にとっては、ここはよい修行室になるともいえよう。客に仕つかえ、自分に慎み、低頭屈身ていとうくっしん、すこしの粗相そそうもないように、終始、おのれの心を人の満足と歓びのために提供しきるなどという行いは、とても信長の性しょうには合わぬことと思われもするのだが、それがこの茶室では極めて自然に行えるのだった。主君が奉公人となり、奉公人がかりに主座にすわってみる。これは小閑のあそびといえ、なかなかおたがいによい反省にもなった。
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