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「出羽国仙北より、水無銀山阿仁みずなしぎんざんあにと云ふ処へ越ゆる近道、常陸内ひだちないと云ふ山にて、路を踏み迷ひ炭焼小屋に泊りし夜、山男を見たり。形は豊前のに同じけれども力量は知れず。木も炭も石も何にでも負ひもせず。唯折々おりおり其小屋へ食事などの時分を考へ来るとなり。飯なども握りて遣つかはせば悦びて持ち退く。人の見る処にては食せず。如何いかにも力は有りさう也。物は言はず。たゞのさ/\立廻りあるくばかり也。尤もつとも悪きことはせず。至つて正直なる由よしなり。此処ここにては山女は見ず。又其沙汰さたも無し」。
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