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着衣で巨乳な素人娘正月を、わたしはまはらぬは寂さびしきを。
私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。父は四国の伊予の人間で、太物ふとものの行商人であった。母は、九州の桜島の温泉宿の娘である。母は他国者と一緒になったと云うので、鹿児島を追放されて父と落ちつき場所を求めたところは、山口県の下関と云う処ところであった。私が生れたのはその下関の町である。――故郷に入れられなかった両親を持つ私は、したがって旅が古里であった。それ故、宿命的に旅人たびびとである私は、この恋いしや古里の歌を、随分侘しい気持ちで習ったものであった。――八つの時、私の幼い人生にも、暴風が吹きつけてきたのだ。若松で、呉服物の糶売せりうりをして、かなりの財産をつくっていた父は、長崎の沖の天草あまくさから逃げて来た浜と云う芸者を家に入れていた。雪の降る旧正月を最後として、私の母は、八つの私を連れて父の家を出てしまったのだ。若松と云うところは、渡し船に乗らなければ行けないところだと覚えている。
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眩暈めまひして慄ふるへた私は電燈を消した。夏の月光が洪水こうずいのように蚊帳の中に満ちあふれた。着衣で巨乳な素人娘――あの七十郎が。「腕に注射針の痕があります」
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