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実際この類の狐になると、果して人に化けたのやら、もしくは人の形になりきっているのやら、その境目さかいめがもうはっきりしてはいなかった。それ故にかえって本人の方から、たとえ露骨には名乗らぬまでも、やや自分の狐であることを、暗示する必要があったと見える。空菴くうあんという狐が自ら狐の一字を書したことは『一話一言いちわいちげん』にあり、また駿州安倍郡の貉は狸という字に紛わしい書を遺した。しかも他の一方においては、人が狐に化けたという話も近世は存外に多かった。物馴ものなれた旅人が狐の尻尾を腰さげにして、わざとちらちらと合羽かっぱの下から見せ、駕籠屋かごや・馬方うまかた・宿屋の亭主に、尊敬心を起こさせたという噂は興味をもって迎えられ、甚だしきはあべこべに、狐を騙だましたという昔話さえできている。だから私は村々の狸和尚が、いずれも狸の贋物にせものであったとはもちろん言わぬが、少なくともいかにしてこれを発見したかは、考えてみる必要があると思うのである。
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