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一ノ関の兵部宗勝ひょうぶむねかつと取り交わした証文が、甲斐の手ににぎられているという。雅楽頭はすっかり忘れていた。兵部との約束も忘れていたし、証文の取り交わしなどということは、初めから気にかけてさえいなかった。兵部にせがまれたのでやむなく書いただけで、そんなものが問題になろうとは考えたこともなかった。しかしそれがいま、彼の鼻先へつきつけられたのだ。
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