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摂州川辺かわべ郡東富松の部落においては、すでに茨木童子の家筋いえすじは絶えたかわりに、更に一段と心を動かすべき物語が残っていた。『摂陽群談せつようぐんだん』巻十に曰う。童子生まれながらにして牙生い髪長く、眼に光あって強盛なること成人に超えし故に、一族畏怖いふしてこれを茨木の辺に棄すてたところ、丹波千丈岳せんじょうがだけの強盗酒顛童子拾い還りて養育して賊徒となす云々。しかも両親がのちに病に罹かかって同じ枕に寝ているのを、術をもって遙かにこれを知り、心配をして見舞に還ってきたというのは、やはり松崎の寒戸さむとの婆などの例であろう。ただいまは京都に留まって、東寺の辺に安住している。人に怖ろしい姿を見せぬように、急いで還ろうと飛んで往ったという田圃路たんぼみちに、安東寺の字名あざななどが残っており、その時親が悦よろこんで団子だんごを食わせた記念として、毎年同じ日に村では団子祭をするといっている。
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