不倫好きすぎ事ノ正邪デハナイ「ええ。そうしたら御飯ですよ」
旅行者のほうは考えこんでいた。外国の事情に決定的に介入することは、いつでも問題がある。彼は流刑地の住民でもなければ、この流刑地が属する国の国民でもない。もし刑執行に断罪を下したり、あるいはそれを阻止しようと思うなら、人からこういわれるだろう。お前は外国人だ。黙っていろ。それに対して少しでも答えられる言葉はなくて、ただつぎのようにつけ加えていうことができるだけだろう。自分はこの件についてはさっぱりわからない。なにしろ自分はただ見物しようという目的だけで旅行しているのであって、たとえば外国の裁判制度を変えようなどという目的なんかで旅行しているのではけっしてない、と。とはいうものの、この土地ではいろいろな事柄がひどくこちらの気をそそるものがある。裁判手続きの不公正なことと刑執行の非人間的なこととは疑う余地がない。それをだれだって旅行者の何か利己的な気持と受け取ることができないのだ。というのは、受刑者は彼にとっては縁のない者であり、同国人でもなければ、同情は全然そそらないような人間だ。旅行者は上級の役所のいろいろな紹介状をもっていて、この土地ではたいへん鄭重ていちょうに迎えられたのだった。そして、彼がこの刑執行に招待されたことは、この裁判についての彼の判断を要求していることを暗示するもののようにさえ思われた。今、あまりにもはっきり聞いたように、司令官はこの裁判手続きの賛成者ではなく、この将校に対してほとんど敵意ある態度を取っているだけに、いっそうそんなふうに思われるのだった。
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