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陸が生れた弘化四年には、三女棠とうがまだ三歳で、母の懐ふところを離れなかったので、陸は生れ降おちるとすぐに、小柳町こやなぎちょうの大工の棟梁とうりょう新八というものの家へ里子さとこに遣やられた。さて嘉永四年に棠が七歳で亡くなったので、母五百が五歳の陸を呼び返そうとすると、偶たまたま矢島氏鉄が来たのを抱いて寝なくてはならなくなって、陸を還すことを見あわせた。翌五年にようよう還った陸は、色の白い、愛らしい六歳の少女であった。しかし五百の胸をば棠を惜おしむ情が全く占めていたので、陸は十分に母の愛に浴することが出来ずに、母に対しては頗すこぶる自ら抑遜よくそんしていなくてはならなかった。
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