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また大隅海上の屋久島やくのしまは、九州第一の高峯を擁して、山の力の今なお最も強烈な土地であるが、島の婦人は往々にして鬼の子を生むことありと、『三国名勝図会さんごくめいしょうずえ』には記している。「山中に入りたる時頻しきりに睡眠を催し、異人を夢みることあれば必ず娠はらむ。産は常の如くにしてたゞ終りて後のち神気快からずと雖いえども死ぬやうなことは決して無い。生れた児は必ず歯を生じ且つ善よく走る。仍よって鬼子とは謂いふ也」とある。かくのごとき場合には、柳の枝をその児の口にくわえさせて、これを樹の枝に引懸ひっかけて置くと、一夜を過ぐれば必ず失せてなくなるといっていた。普通の赤ん坊ならば無論活きているはずはないのだが、島の人々は或いは父方に引き取って、養育しているもののごとく考えていたものらしい。前後の状況は甚だしく相違するが、とにかくにこれも一種の神隠しではあった。
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