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墓にまいる人に樒しきみや綫香せんこうを売り、また足を休めさせて茶をも飲ませる家で、三十ばかりの怜悧かしこそうなお上かみさんがいた。わたくしはこの女の口から絶望の答を聞いた。共同墓地と名にはいうが、その地面には井然せいぜんたる区画があって、毎区に所有主がある。それが墓の檀家である。そして現在の檀家の中うちには池田という家はない。池田という檀家がないから、池田という人の墓のありようがないというのである。
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