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鮓屋久次郎は本もとぼて振ふりの肴屋さかなやであったのを、五百いおの兄栄次郎が贔屓ひいきにして資本を与えて料理店を出させた。幸に鮓久すしきゅうの庖丁ほうちょうは評判が好よかったので、十ばかり年の少わかい妻を迎えて、天保六年に倅せがれ豊吉とよきちをもうけた。享和三年生うまれの久次郎は当時三十三歳であった。後のち九年にして五百が抽斎に嫁したので、久次郎は渋江氏にも出入でいりすることになって、次第に親しくなっていた。
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