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取次に出たのは十八九のしとやかな下女である。白井道也しらいどうやと云いう名刺を受取ったまま、あの若旦那様で? と聞く。道也先生は首を傾かたむけてちょっと考えた。若旦那にも大旦那にも中野と云う人に逢うのは今が始めてである。ことによるとまるで逢えないで帰るかも計はかられん。若旦那か大旦那かは逢って始めてわかるのである。あるいは分らないで生涯しょうがいそれぎりになるかも知れない。今まで訪問に出懸でかけて、年寄か、小供か、跛ちんばか、眼っかちか、要領を得る前に門前から追い還かえされた事は何遍もある。追い還されさえしなければ大旦那か若旦那かは問うところでない。しかし聞かれた以上はどっちか片づけなければならん。どうでもいい事を、どうでもよくないように決断しろと逼せまらるる事は賢者けんじゃが愚物ぐぶつに対して払う租税である。
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