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仰天した先生のかみの毛は、恐怖のために逆だった。どうすればよかろう。向きをかえて逃げだそうとしても、もう間に合わない。それに、とても逃げおおせるものではない。もしそれが幽霊か悪鬼だったら、風の翼に乗ることもできるのだ。そこで、彼は見せかけの勇をふるって、どもりながら訊問じんもんした。「だれだ、貴様は」返事はなかった。彼は前よりもっとふるえる声でくりかえした。なおも答えはない。もう一度彼はびくとも動かぬガンパウダーの横腹をたたきつけ、そして両眼をとじて、夢中になって、讃美歌さんびかをどなりだした。するとそのとき、この恐ろしい影のようなものは動きはじめ、ぱっと一飛び岸にかけのぼると、たちまち道の中央に突ったった。夜は暗く陰鬱ではあったが、この正体不明のものの形はいまや少しはわかった。それはからだの大きい騎士のようで、逞ましい黒馬にまたがっているらしかった。邪魔をしようともせず、さりとて、うちとけて挨拶あいさつをしようともせず、道の片側に遠ざかったまま、老ガンパウダーのつぶれている目の側について、ゆるゆると歩を進めた。ガンパウダーは今はおどろきもしずまり、おとなしくなっていた。
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