桜りおナンパ乱交風が吹き消して行くよ。その六十八
私はその顔を見た瞬間、どう云うわけか知りませんけれど、ゾッとしましたよ、ホームズさん。――私はその家うちからかなり離れていたので、その顔をはっきり見定めることは出来ませんでしたけれど、何かこう気持ちの悪い惨忍そうな所がありました、それが私の受けた印象でした。――私は、私を見詰めているその顔をもっと近くでよく見てやろうと思って、いそいで近寄っていったんです。すると急にその顔は引込んじまいました。まるで不意に部屋の暗やみの中に※(「てへん+毟」、第4水準2-78-12)もぎ取られたように、急に見えなくなってしまったんです。けれど私はまだ五分間ばかりそこにじっと立っていました。そしてその顔から受けた印象についていろいろ考えてみました。――私はそれが男だったか女だったか、どうしてもはっきりしないんです。けれどもその色だけははっきり覚えています。それは死人の顔のような、青ざめた黄色でした。そしてその中うちに何か人をゾッとさせるようなものを含んでいるのです。私は不思議さのあまりとうとう、その離れ家の新しい住み手がどんな人間か見とどけてやろうと決心しました。そこで私は近づいて行ってノックしますと、すぐ入口の戸は開けられて背の高い痩せこけた不愛憎ぶあいそうないやらしい顔をした女が現れました。
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